米国電気電子学会(IEEE)(2002年)

世界最大の電気・電子に関する非営利の技術者組織で、国際会議の開催、論文誌の発行、技術教育、標準化などの活動をおこなっています。同学会は、低周波(0kHz~3kHz)の電磁界(電磁波)の人体曝露に関する安全規格(IEEE規格)を2002年に発行しました。

0kHz~3kHzの電磁界(電磁波)への人体曝露に関する安全レベルについてのIEEE規格(2002)60Hzの場合

項目 電界 磁界
職業者曝露(注) 20kV/m以下 2,710μT(27.1G)以下
公衆曝露 5.0kV/m以下 904μT(9.04G)以下

(注)IEEEでは、「管理環境」という用語を使用していますが、ICNIRPガイドラインで定めている「職業者曝露」と同意です。

米国環境健康科学研究所(NIEHS)

米国では、超低周波電磁界(電磁波)(注)と人の健康影響との因果関係を明らかにする目的で、1993年から6年間、約6,500万ドルの予算を投入し、研究プロジェクトを実施しました(これをRAPID計画といいます)。このRAPID計画の主管官庁が米国環境健康科学研究所(NIEHS)です。同研究所は、米国厚生省(DHHS)を構成する機関の1つである米国健康研究所(NIH)の下部機関です。

(注)送電線・変電所などの電力設備や家電製品などから発生する60Hzの電磁界(電磁波)は、超低周波電磁界(電磁波)です。

NIEHS報告書(RAPID計画の最終報告書)(1999)

結論

超低周波電磁界(電磁波)の曝露が何らかの健康リスク提起するということを示唆する、科学的証拠は「弱い」。

  • 生物学的研究の結果に対する影響
    動物や人や細胞でおこなわれたほとんどのメカニズムの研究における全ての実験的な証拠は、環境レベルの超低周波電磁界(電磁波)の曝露と生物学的作用や病状変化との間の原因となる関連性を支持できていない。
  • 疫学研究の結果に対する評価
    個々の研究からの支持は弱いが、曝露測定のいくつかの方法に関して、曝露増加に伴ってほぼ一貫したわずかなリスク増加のパターンを示している。このような評価結果から、「超低周波電磁界(電磁波)の曝露が完全に安全であると認められないものの、真に健康に危険である確率は小さい。」
  • 磁界曝露の低減についての提言
    積極的な規制への考慮を正当化するには不十分である。しかし、実質的には米国の全ての人は電気を使用しており、超低周波電磁界(電磁波)に日常的に曝露されていることから、曝露低減に向けた方法を公衆と規制された社会の両方に教育することを継続的に強調するような、受動的な規制活動は認められる。

総務省

電磁界(電磁波)の中でもいわゆる電波を所管しており、電波が人体に好ましくない影響(刺激作用と熱作用)を防ぐための基本的考え方や基準値を示した「電波防護指針」を定めています。

電波とは、周波数が3テラヘルツ(THz)以下の電磁波をいい、テレビ・ラジオ放送や携帯電話などの他、気象レーダーや鉄道の無線IC乗車券、電子レンジなど、幅広い分野で使われております。

  • 電波防護指針(1990)
    例:熱作用を防ぐための基準値 0.08W/kg(ワット/キログラム:全身平均SAR)
    SAR(比吸収率):生物が電波に曝露されることにより、単位質量の組織に単位時間に吸収されるエネルギー量
  • 生体電磁環境研究推進委員会 報告書(2007)
    現時点では、電波防護指針を超えない強さの電波により、非熱効果を含めて健康に悪影響を及ぼすという確固たる証拠は認められない。

電気学会

電気学会は、1995年12月に会長直属の機関として「電磁界生体影響問題調査特別委員会」(委員長 東京理科大学関根泰次教授:当時)を発足させ、中立、公平な立場から、これまでの研究状況を調査し、総合的に評価して2期にわたって報告書をまとめました。

  • 第I期報告書(1998年)
    電磁界の実態と実験研究の現状で得られた成果をもとに評価すれば、「通常の居住環境における電磁界が人の健康に影響を与えるとは言えない」と結論できる。
  • 第II期報告書(2003年)
    現時点においても、第I期報告時の総合評価を変更するに足る報告や知見はない。
電磁界の生体影響に関する現状評価と今後の課題 報告書の画像
第I期報告書
電磁界の生体影響に関する現状評価と今後の課題 第II期報告書の画像
第II期報告書

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