調査研究
主な生物学的研究
一部の疫学研究で電磁界(電磁波)と小児白血病との間に弱い関連が示唆されているのに対し、これまでに実施された生物学的研究(動物実験および細胞実験)で、電磁界(電磁波)への曝露が小児白血病を含むがんの原因になるとの再現性のある結果は得られていません。
ここでは、国内の電力会社が共同で実施した、電磁界(電磁波)とがんの関係についておこなわれた研究を紹介します。
国内における研究事例(電力会社の共同研究)
当社を含む電力会社10社は、共同で「磁界が人のがん細胞増殖に及ぼす影響」「磁界が免疫機能に及ぼす影響」を確認するため、1997年~2001年にかけて研究(細胞実験)をおこないました。
実験装置
磁界が人のがん細胞増殖に及ぼす影響
磁界が、ヒトのがん細胞の増殖に影響を及ぼすかどうかを細胞実験により確認しました。
実験細胞
人の腫瘍細胞5種類
実験方法
培養したがん細胞に、50Hzおよび60Hzで、0μT、2μT~500μTの磁界に曝露し、がん細胞の数を測定
実験結果
全てのがん細胞の増殖は、磁界の種類や磁界のありなしに関わらず、同じ傾向を示しました。なお、再現性を確認するため、繰り返し実験をおこない同様の結果を得ました。
これらのことから、「がん細胞の増殖は、磁界の有無に関係しない」という結果が得られました。
磁界が免疫機能に及ぼす影響
磁界が、がん細胞に対する免疫機能に影響を与えるかどうかをヒトの免疫細胞(注1)を用いた実験により確認しました。
(注1)がん細胞を直接攻撃したり、攻撃を促進・制御する細胞
実験細胞
健康な人の免疫細胞
免疫細胞の攻撃対象として用いたヒトのがん細胞
実験方法
50Hzおよび60Hzで、0μT、2μT~500μTの磁界に曝露し、以下を測定
実験(1):免疫細胞が破壊したがん細胞の数を測定
実験(2):免疫細胞が産生したサイトカイン(注2)の量を測定
(注2)主に免疫細胞間の情報の伝達、がん細胞の攻撃を担う物質
実験結果
実験(1)、実験(2)の結果はともに磁界の種類や磁界の有無に関わらず、同じ傾向を示しました。なお、再現性を確認するため、繰り返し実験をおこない同様の結果を得ました。
【実験(1)の結果】
磁界のありなしに関わらず、実験後のがん細胞傷害率(注1)は、ほぼ同じでした。
このことから、「免疫細胞ががん細胞を破壊する作用に磁界の有無は関係しない」という結果が得られました。
(注1)がん細胞傷害率=(破壊されたがん細胞の量/最初に入れたがん細胞の量)×100(%)
【実験(2)の結果】
磁界のありなしに関わらず、実験後のサイトカイン産生量は、ほぼ同じでした。
このことから、「免疫細胞がサイトカインを産生する作用に磁界の有無は関係しない」という結果が得られました。